沿線グラス

沿線グラスが生まれる前の話

安心堂のオリジナルグッズに「沿線グラス」というものがあります。

沿線グラスは地元をつなぐコミュニケーショングッズとして、少しずつ認知されてきました。

販売開始したのは2020年7月1日。

ネットショップつなぐつむぐを立ち上げました。

沿線グラスが生まれたのは新型コロナウイルスの感染が拡大している真っただ中。

2020年4月、安心堂も危機的状況の真っただ中でした。

印刷の仕事がパタリと止まってしまっていたのと、感染のリスクを考慮して私以外のスタッフは皆、しばらくお休みにしました。

工場内で一人佇みながら、安心堂の未来を考える毎日。

日用品の買い占めなどが問題になり、人間関係がどんどん希薄になる世の中に、戸惑いと悲しみを感じながら日々過ごしていました。

「安心堂の印刷の価値って何だろう」

そんなことを悶々と考える中で、徐々に見えてきたものがありました。

自分の中で、覚悟や決意のようなものが、できたような気がします。

当時の記録を、個人のブログに残していたのでここに転載しておきます。

その頃の思いが、のちに沿線グラスを世に生み出すことにつながっていると、そう思っています。

【未来へ】2020年4月16日

少し前のこと。

近所の取引先に向かうため、自転車に乗っていた。

通り道、娘たちが通っていた中学校の前を通りかかり、校庭の桜が満開になっているのを目にした。

つい、自転車を止めた。

この学校は、次女が中学二年生の時に統廃合され、卒業と同時に廃校となった。

校庭には雑草が生え、誰もいない校庭は傷んでいるようだった。

近いうちに解体される予定の校舎は、人気がなくなると、あっという間に寂れていった。

なのに桜の木だけは堂々と、誇り高く、当たり前のように咲き誇っていた。

生きているんだ。

この桜の木は、どうなるのだろう。

形あるものはいつか壊れる。

だけど、桜は生きている。

満開の花が、人間の身勝手さを訴えてるように思えた。

でもきっと。

この場所がどんな風に変わっていこうとも。

この場所で過ごした子どもたちの体温や、感情や、喜怒哀楽や、息遣いや、人影は.

残像となり、思い出として残っていく。

それは誰にも、何にも変えられない、証のようなものなんだと思う。

近頃私たちの生活は、コロナウイルスの猛威に押され、瞬く間に変わっていった。

外出自粛を要請され、人と会ってはならなくなった。

でもそれは、ウイルスから身を守るために必要不可欠なこと。

つい数ヶ月前まで、こんな事態になろうと誰が思っていただろう。

世の中は刻一刻と変わっていく。

SNSが駆使され、リモートワークやリモート会議が定着しつつある。

世の中は変化していくものだ。

その時世にあった生き方を、していかなければならないのも事実だ。

世の中はもっと変わっていくだろう。

生きるために必要なことを、みな粛々と守り続けている。

そして戦っているのだ。

ただ。

みんなも気付いてるはず。

生きるために必要なこととは何か。

それはただ単に、衣食住があればいいのではないということを。

人間の生活を豊かにしていたのは何なのかを。

生命を維持するためだけなら、必要ではないかもしれない音楽や芸術。

イベントやアミューズメントが、どれほど私たちの生活を豊かにしてくれていたのか。

私も、体が、感覚が覚えている。

娘に連れられて行った、東京ドームで開催されたジェネレーションズのドームツアー。

場外は大混雑。

入場するためだけに長蛇の列に並ばされた。

だけど。

LIVEが始まったときのあの高揚感と大歓声。

今でも忘れられない。

あの胸が震えたときの感覚。

それから、絵画などには疎いけど。

モネの睡蓮がずっと好きで。

東京美術館で開催された、モネ展を観に行ったとき。

実際に目にしたのは、私の好きな睡蓮の絵ではなかったけど。

他の睡蓮の絵も素晴らしく、他の作品にも圧倒され、魅了された。

絵画の素晴らしさは、観た人にしかわからない…ということを知ることができた。

人が生きるということは、ただ空気を吸い、栄養や水分を摂り、睡眠することだけではないのだ。

自然の中で大好きな仲間とバーベキューしながら飲むビールの美味しさや。

娘たちの笑顔に包まれ、夢心地で過ごしたディズニーランドの楽しさや。

苦しさと疲労を乗り越え、天空の頂上に達成し、下界を見下ろしたときの爽快感や。

晴天の下、汗をかきながら、音楽に耳を傾け、その歌声に涙を流したときの感動や。

大勢の人たちに押されながらも、竹笛の音色に包まれて、ワッショイワッショイとお神輿を担いだ時の誇らしさや。

ものづくりのワークショップで、子どもたちの最高の笑顔に出会えたときの高揚感や。

そうやって、人と人とが繋がっていくことが、人生を豊かにしていくんだ。

息遣いや体温。

鼓動や、声の振動。

感情や感動。

悲しみや苦しみ。

喜びや、幸福感。

ともに過ごすことで、感じるんだよ。

だから、分かち合おう。

喜び合おう。

どんな谷底に堕ちようとも。

生きていれば這い上がれる。

また、いつか。

必ずやってくるよ。

あの時の感動が。

あの、幸せなひと時が。

だから。

夢を忘れるな。

希望を捨てるな。

それまで生きよう。

生き続けよう。

もう一度いや、何度でも。

あの時の笑顔を取り戻そう。

進もうよ。

輝かしい未来へ。

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